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陶匠・濱田庄司(日本民藝館)
炎天下の中,アスファルトの照り返しを受けながら,ようやく目的の美術館に着く。館内に入ってほっとするのであるが,汗が引くまでは,ちょっと展示を見始める気にならない。これだけの猛暑では,さすがに美術館巡りもバテてしまう。
日本民藝館は,そんな日でも,冷房だけでなく,館内全体が醸し出す優しい空気が,暑さで消耗したエネルギーを回復させてくれた。柱や梁,手すりや床の木の色がきれいだ。廊下の椅子に座っているとウトウトしてしまった。窓から外を見ると,まだ暑そう。ついつい長居をしてしまう。 濱田庄司は,この日本民藝館の2代目館長で,初代館長である柳宗悦,バーナード・リーチ,河井寛次郎らとともに「民芸運動」を展開した。いまでは民芸品とか民芸風などと普通に使われている「民芸」という言葉は,柳らの造語だそうだ。 私は学生時代,友人に連れられて益子町に行ったことがある。ここが人間国宝の陶芸家,濱田庄司の家だと言われて,門から中をのぞくと,ひとりの老人が,庭に皿を並べていた。まだ黄土色のままだったので窯に入れる前の乾燥のためであろう。特徴のある丸いメガネをしており,本人だとすぐに分かった。その2,3年後に亡くなった。今回は,没後30年の展覧会である。 沖縄の砂糖キビを素材にした「黍文」という文様や釉薬の「流掛」,それに器の形などとてもおおらかである。色合いも柔らかい。皿や花瓶や茶器も,このような展示ではなく,普段の生活で使っていると,きっと愛着が湧いてくるだろう。全体として,やはり,「民芸」という言葉からイメージする優しさ,親しみの感じられる作品である。 もちろん,濱田庄司の作品を日常の生活で使っている人などはほとんどいないだろう。持っている人も裕福な方が多いだろう。それでも,民衆の生活にとけ込んだ美を発見し,また,生活になじむ美を創り出していく「民芸運動」の理念を体現している作品である。その理念は,先日見に行った「バウハウス」とある意味同じではないかと思った。 日本民藝館に展示されている陶器や織物など,郷土色のある古い暮らしの匂いがする。日本に限らず,朝鮮,中国や,イギリスの物もそうである。我々は現代の日常生活の中では和服を着ることはないし,飲み物もペットボトルやマグカップが多い。生活の中の美と言っても,その美意識も変化している。 それでも,陶器などの工芸品を見て,こんな食器を使ってみたいなあと思ったり,なにかほっとした心持ちになるのは事実である。飲食店でも,民芸風の内装のところは多い。居心地のよい雰囲気づくりだろう。我々の中にも古い時代から生活の中で培われた美意識があって,それが反応するのだろうか。「美しい」と感じるとともに「癒されるぅ~~」という感じるのである。
by oono164935
| 2008-08-10 22:25
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