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休日には,美術館巡りをしています。立ち寄った美術展などの備忘録です。
by oono164935
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初期伊万里展(戸栗美術館)

初期伊万里展(戸栗美術館)_b0131361_20212414.jpg日本で初めて磁器を生産したのは,肥前鍋島藩(佐賀県)の有田である。豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に大名が連れ帰った陶工達によって磁器の技術がもたらされたそうだ。そんな陶工のひとり李参平が白磁鉱を有田で発見し窯を開いたと伝えられ,有田では李参平を祭神とする陶山神社もあり,「陶祖」として尊敬されている。
このように生産された磁器を各地に送り出すための積出港が伊万里だったため,有田焼は「伊万里焼」とも呼ばれるようになった。伊万里焼というと柿右衛門の赤絵のような色絵磁器のイメージがあるが,この展覧会は,それ以前の草創期である1610年代頃から、技術革新によって色絵磁器が生まれる1640年代~50年代頃までの「初期伊万里」と称される作品を展示している。

初期伊万里展(戸栗美術館)_b0131361_20264263.jpgこのころ日本に輸入されていた景徳鎮の影響を受けた中国風の龍や鳳凰などのモチーフ,中国風の幾何学文様が描かれている。「呉須」よばれる絵具(焼くと藍色に発色する。)で描き、その上に釉薬を掛けて焼く染付という技法で皿や鉢、水指などがつくられたが,技術的には未完成で,染付の色が一定しなかったり,器形が歪んでいたり,陶工の指の跡が残っていたりする。

パンフレットによると,この展覧会は,中国の景徳鎮窯の磁器を目標に,朝鮮から来た陶工たちによってつくられ,技術的に発展しながら,さらにデザイン的にも中国や朝鮮に見られない和風の文様の作品も作られるようになった初期伊万里の展開を見てもらいたいというものである。

初期伊万里展(戸栗美術館)_b0131361_20271413.jpg解説にあるように,素朴であたたかみのある味わいや未完成ゆえの面白みが魅力となっているが,正直なところ,「なるほどねー」と思う程度で,良さはあまり分からなかった。陶磁器を含め,日本の古美術にはこれまであまり興味を持たなかったからかもしれない。

しかし,不思議なもので,美術展に行った感想をこのようなブログを書くようになってから,何かその作品の魅力,すばらしさを見いだそうと,作品を真剣に見るようになったと思う。作品の解説も丁寧に読み,帰ってからウェブなので調べたりもする。それだけで十分すぎるほど楽しい。こんなことを重ねていけば,今より少しは見る目が養われていくのだろうか。これまでの興味にとらわれずに,できるだけ広くいろいろなジャンルのものを見ていきたい。

初期伊万里展(戸栗美術館)_b0131361_14473.jpgところで,私の祖父は生前有田焼を扱う陶磁器店をやっていた。両親も私も佐賀出身で,父は有田焼を扱う会社に勤めていた。母も幼い頃有田に住んでいたことがあるそうだ。家業と言ってもいい有田焼であるが,恥ずかしいことに,私は,50代半ばまで,有田焼について関心も持たず,親や親戚から話を聞くこともなかったし,何も知らなかった。初期伊万里という独自の作風が存在することやその後の展開もこの展覧会で初めて知ることができた。最近,少し自分のルーツにも関心が向いてきたところで,陶磁器にも目を向けていきたい。戸栗美術館は,こじんまりとしているが,伊万里焼の所蔵が多さでは有数であり,自宅からも近い。ときどき訪れてみよう。
by oono164935 | 2008-06-21 20:38
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